3. 橋梁桁下の空間
このことにつきましては、むしろ運河の方で申述べるのが至当であるかも知れませんが、便宜上ここで申上げること致します。
大正10年5月13日、内閣において認可公告になりました東京都市計画事業中河川運河の部に、次のようなことが載っております。
第1 河川、運河の等級および幅員は左記の標準による
(1) 1等 60間以上
(2) 2等 30間以上
(3) 3等 第1類 26間以上
第2類 22間以上
(4) 4等 第1類 18間以上
第2類 14間以上
第3類 10間以上
(5) 等外 10間未満
第2 河川、運河の深度は左の標準を下ることを得ず
(1) 1等 零点下15尺
(2) 2等 零点下 7尺
(5) 3等 第1類 零点下 6尺
第2類 同上
(6) 4等 第1類
第2類 零点下 4尺
第3類 零点下 3尺
(5)等外 零点下 2尺
第3 河川、運河に橋梁を架設する場合には水面より橋桁最下端までの高
および径間は左の標準による
1、高 零点上14尺以上
2、径間 27尺以上
第4 本設計の零点とは霊岸島水位基準零尺をいう
第5 特別の事由ある場合においては都市計画東京地方委員会議を経て
前各項の規程によらざることを得
上記中第3の事項が、桁下の空間を指定したものあります。むろん船の方から申しますと、この限界は大きなほどよいけれども、そう大きくすると下町の土地は全体に低いから、橋台取付けの所で急に7、8尺も上げなくてはならな区なります。それですから、いずれの川にも太鼓橋のようなものを架けなくてはなりません、
一方橋上を通るトラフィックも、非常な量でありまして、橋毎に急な勾配を通らなくてはなりない様では甚だ迷惑なことになります。ことに本所深川の方は一般に地盤が低いから、橋を高くすると、道は常に上がったり下ったりする不便が、特に甚だしいのであります。
また他方から考えますと船の方では限界に少し無理と思うほど、積荷をしてまいりますものですから、大きくしてもその習慣は矯正することができずして、また前同様無理な積荷をしてまいり、何時までも同様のことを繰返しますから、これらに対しては14尺15尺ということは問題になりませんと思いますが、ただ空船の船足が浮いたときに、満潮でも通れる様にすることが必要であります。
それらの点を考慮致して、以上の限界を定めたわけでありましょう。そこでこの度この空間のことが問題となりまして、関係の諸官衙とご協議申上げたのでありますが、いまだ決定には至りません。前に申上げた都市計画事業の公告を重んじ、大体左記のようにしたらいかがかと考えております。
橋梁の桁下空間限界に関する標準
1. 荒川および荒川派川の架橋に当たりては、橋桁下端における高さ東京湾中等潮位上5.5m(霊岸島水位基標零点上6.612m)以上、幅16.4m以上の空間を1個所、また幅10m以上の空間2箇所以上を存置せしむることを要す。
ただし、間隔4..0m以上に配置せられたる吊床桁は、高さ1.2mを限り上記の限界内に入ることを得。
2. 小名木川の架橋に当たりては、橋桁の下端において高さ東京湾中等潮位上4.1m(霊岸島水位基標零点上5.212m)以上、幅8.2m以上の空間1個所以上を存置せしむることを要す。
3. 日本橋川、神田川、亀島川、京橋川、桜川の架橋に当たりては、橋桁下端において高さ東京湾中等潮位上3.5m(霊岸島推移基標零点上4..612m)以上、幅8.2m以上の空間1箇所以上を存置せしめることを要す。
4. 築地川、楓川、外濠、汐留川、箱崎川、横十間川、大島川、大島川西支川、大横川、大横川南支川、油堀川、竪川、源森川、北十間川、仙台堀川、汐濱川、中の川、濱町川、龍閑川、東堀留川、新川、三十間堀川、古川、山谷堀川、須賀堀川の架橋に当たりては、橋桁下端において高さ東京湾中等潮位上3.2m(霊岸島推移基標零点上4..312m)以上、幅8.2m以上の空間1箇所以上を存置せしめることを要す。
5. 五間堀川、六間堀川、曳舟川の架橋に当たりては、橋桁下端において高さ東京湾中等潮位上2.5m(霊岸島水位基標零点上3.613m)以上、幅8.2m以上の空間1箇所以上を存置せしめることを要す。
(参項)東京湾中等潮位は参謀本部水準基面と同高にして、霊岸島水位基標零点上1.112mに当たります。
この基準によると隅田川辺りでは1箇所東京湾中等潮位上5.5m、幅16.4mを有する空間を取ることになりますが、もし2箇所以上にかかる高さの空間を設けますれば、1箇所の幅は10m以上あればよいのであります。
橋梁の吊材は1.2mまでこの限界内に入り下って差し支えないが、吊材間の最小のクリアランスは、幅4..0m以上なくてはならないというのであります。
または、市内その他の重要なる河川では、河川により東京湾中等潮位上3.2mの高さを有し、幅8.2mを有する空間を存すべしということとなりました。これより高き積荷をしてきたものは、潮の引くのを待つ必要があることとなります。