●参考資料
- 1.復興資料室の文献
- 「帝都復興事業誌」
- 「帝都復興事業に就いて」
- 2.補足参考文献
- *1「橋梁設計図集」
- 第一輯〜第六輯
- 昭和3年3月〜昭和5年3月
- 復興局土木部橋梁課編纂
- *2 「帝都復興史 第二巻」
- 昭和5年5月
- 復興調査協会編
- *3 「隅田川筋著名橋概要」
- 昭和49年9月
- 東京都建設局
- *4 「隅田川筋橋梁調査報告書」
- その1、その2
- 昭和45年度
- 東京都建設局
●復興橋梁の工事費・鋼重比較表
橋梁名 |
A |
C |
C/A |
w |
永代橋 |
4,074 |
2,924 |
718 |
965 |
清洲橋 |
4,105 |
3,213 |
783 |
1,008 |
両国橋 |
3,948 |
988 |
250 |
663 |
蔵前橋 |
3,810 |
1,751 |
460 |
615 |
厩 橋 |
3,344 |
1,134 |
339 |
603 |
駒形橋 |
3,280 |
1,900 |
579 |
626 |
吾妻橋 |
3,002 |
1,230 |
410 |
313 |
言問橋 |
5,229 |
2,383 |
456 |
518 |
相生橋 |
4,224 |
1,507 |
356 |
342 |
合 計 |
35,016 |
17,030 |
486 |
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太字の橋梁名は復興局施行
A:橋面積 (u)
C:工事費(千円)
C/A:uあたり工事費(円/u)
w:uあたり鋼重(kg/u)
- 備考)
- 両国橋のuあたり単価は、他橋と比較して著しく安い。本橋は、昭和5年2月着手、昭和7年11月竣功と、復興橋梁の中で最も遅い着手、竣功となっている。震災復興事業は、昭和5年度(昭和6年3月末日)で完了している。これらから、本橋の工事費は、既定予算内におさめるための経理上の額、あるいは見込額かと思われる。
- 出典)
- 1.帝都復興区画整理誌 第一編
- ・p-415〜475
- 2.帝都復興事業誌 土木編上
- ・復興事務局編
- ・昭和6年3月
- ・p-480〜483
- 3.隅田川筋著名橋概要
- ・前出
- ・uあたり鋼重(kg/u)を参照
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このサイトで記録している隅田川の中・下流部には、震災復興事業の一環として内務省復興局および東京市により、永代橋、清洲橋、両国橋、蔵前橋、駒形橋、厩橋、吾妻橋、言問橋、相生橋(隅田川派川)の復興橋梁9橋が架橋されました。なお、これらと同時期に架橋された白鬚橋と千住大橋は、東京府による都市計画事業によるものです。
復興橋梁のうち、復興局が所管した永代橋、清洲橋、蔵前橋、駒形橋、言問橋、相生橋の6橋は、架橋当時、隅田川6大橋と呼ばれました。
隅田川の復興橋梁は、それぞれが個性的であると同時に、橋梁群全体として一貫したデザイン意図のもとに計画されています。
ここでは主として、復興橋梁資料室(以下、資料室という)で紹介している参考文献および補足資料、また推定も加えて、隅田川6大橋の計画プロセスを取りまとめています。
また、東京市施行の両国橋、厩橋、吾妻橋の3橋については、型式選定に関する整った資料を入手できませんでした。このため、6大橋に関する資料などをもとに、計画プロセスを想定しています。
●総 論
◆6大橋の位置付け
- 隅田川は帝都の中央を流れ、商工業を荷う物流の大動脈をなし、かつ帝都の主たる景観をなしている。
すなわち、隅田川6大橋は、帝都の中核的景観を構成するものであり、帝都の偉観たるべきである。
- このため、所管する東京市関係橋梁費の約3分の1を投資する。
- 両国橋、厩橋、吾妻橋も老朽化し、また震害を受けており架替の必要が生じている。したがって、隅田川筋の橋梁景観は一新することになるので、それぞれの型式について全体の調和に配慮して計画するものとする。
(両国橋の架替は当初計画にはなく、復興事業が相当進捗したところで架替決定がなされた)
◆型式選定の一般方針
- 構造的にその架橋地点に最も妥当な型式であること。
- 景観的にもすぐれていること。
- 構造上また景観上、主桁は充腹構造としトラス構造を採用しないこと。
トラス桁と鈑桁の利害得失は、一つの問題として残されている。ここで、一貫して鈑桁を採用することにしたのは、次ぎの理由からである。
- トラス桁は、構造が複雑であり、格点の剛性に基づく二次応力の影響が大きい。
- トラス桁は、構造が複雑であるので、外観に煩わしいものがある。
- 鈑桁は、二次応力の影響を考慮する必要がなく、また部材の弱点が少ないために寿命が長い。
- 鈑桁の各部材の重量は、トラス桁のそれと比較して大きくなるので、運搬や架設の際に難点となる。しかし、こうした欠点はあるものの、結局丈夫なものを採用するのが得策である。
- 地質の軟弱な地点では、井筒あるいは潜函など深層基礎を採用し、比較的良好な地点では、下部工底面を広くする構造を採用すること。
◆地質概況と橋梁型式
隅田川筋の地質は、以下の通りである。
- 駒形橋附近が最も地質の良いポイントで、河底から約3m位のところに比較的よい砂礫層がある。
- 駒形橋あたりを境にして、上流の言問橋と下流の清洲橋、永代橋に向かい、著しく軟弱な地質となっている。
- 言問橋附近での支持層は、東京湾中等潮位下約18m(以下、中等潮位)となっている。
- 永代橋附近が最も軟弱であり、支持層の位置は中等潮位下約30mとなっている。
- 相生橋附近になると、地質はまた良くなり、支持層の位置は中等潮位下約15mとなっている。
これらの地質に適応する橋梁型式として、以下のようなものが適当である。
- 地質の悪いところでは、荷重の影響を1箇所に集中させるのが得策である。これは、施工性を考えて、橋脚に規模を大きくしたいからである。
この場合、橋梁型式としては、橋脚に力を多く持たせることになるので、中央径間を大きく取り、両側径間は軽易な構造で済ませることになる。
- 地質の良いところでは、耐震性が高く、また景観的にも優れた上路式アーチ橋が適当である。
◆径間割の検討
- 径間数は、既設橋梁の径間数、船運状況や洪水実績から3径間を基本とする。
- 永代橋、清洲橋においては、地質条件、船運状況から、側径間上部構造と主径間上部構造とのバランスが確保できる限り、中央径間を大きく取る。
- 相生橋は、船運状況から大きな径間とする必要がないので、規程の桁下空間限界をクリヤーする程度の径間長とする。
- 河岸の地盤高が低い個所については、側径間を小さくし、橋梁と地先地盤との高低さを軽減するよう工夫する。
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