ver.030205
蔵 前 橋(くらまえ ばし)
- 橋梁形式 鋼2ヒンジアーチ橋(3連)
- 橋 長 173.2m
- 幅 員 22.3m
- 架設年次 昭和2年11月
- 建設機関 復興局
- 管理機関 東京都
- 最 寄 駅 地下鉄浅草線蔵前駅
|
|
橋脚と球形の水切り
|
◆◆◆
蔵前橋は、台東区蔵前一丁目と墨田区横網一丁目との間で都道315号「蔵前橋通り」を渡す橋である。左岸に国技館がある。
創架は昭和2年、震災復興事業による復興橋梁である。橋名は、蔵前の地名によるが、江戸期ここにあった幕府の御米蔵「浅草御蔵」に由来している。2代秀忠の元和6(1620)年、大川端を埋立てて米蔵94棟を建てたという。天領からの貢米を収蔵し、直参の旗本、御家人に食禄を支給していた。
|
歩道部
蔵前専用橋
|
◆◆◆
架橋地点は、比較的地盤が良く、復興事業の当初から耐震性、景観性にすぐれる上路式アーチ橋が構想されていた。両岸の地盤高が高いので、全長にわたって上路型式とすることが可能であった。
橋脚、橋台とも基礎型式は、杭基礎の計画であったが、実績では、右岸側橋台は浅いニューマチックケーソン工法に変更した。これは、支持地盤の状況による他、左岸側橋台に側径間が付随することから、左右岸橋台の耐震性のバランスを図ったものと思われる。
上部構造について、次ぎのような工夫がなされ、技術的合理性を追求するとともに、景観性の向上を図っている。
- すべてのアーチヒンジは同一水平線上に配置する
- 満載等分布荷重に対して、各橋脚の水平反力が全くバランスするように、各径間の支間とアーチライズを定める
◆◆◆
蔵前橋の下流すぐ近くに、蔵前専用橋(昭和42年7月架橋)が架かっている。3径間連続箱桁橋で、NTT回線、東京都の水道管を箱桁のなかに収用している。隅田川の川幅いっぱいに連なる箱桁が、蔵前橋の中距離、遠距離からの眺めを阻害している。
また、蔵前橋、厩橋、駒形橋、吾妻橋と連なるアーチ4橋の最高の視点場は、JR総武線の隅田川橋梁にあるのだが、蔵前専用橋はあたかも目隠し板のようになって、その眺めを台無しにしている。
施設計画に際して、近傍の既設施設との折合いを考えることに欠ける、土木技術者の悪癖を示す典型的事例である。明治のころの電車橋(*1)の現代版である。((*)電車橋:「明治・大正期の隅田川トラス群」参照)
今後は、計画・設計者個々の感性に期待する他、行政による景観管理への強い取組みが不可欠である。東京都景観条例(*2)に基づく、隅田川の景観づくりに期待したい。
- (*2)東京都景観条例
- ・平成9年12月公布
- ・東京の自然を生かし、歴史と分化を継承し、地域の個性と魅力を発展させるために景観づくりを進め、美しい潤いのある東京をつくることを目的とする
|